まえおき

「弟子屈までの源流部は日本で最も野生的な人間臭さのない場所であろう」(日本の川を旅する・新潮文庫より抜粋)
日本カヌーの先駆者、野田知佑さんの言葉。
この言葉に魅せられてしまった・・・しかし実際は・・・

モアは今年の春に念願のカヌー「ウムナック380」を手に入れた。
なぜファルトを選んだかというと、ロングリバーツーリングをやってみたかったからだ。
モアがアウトドアを始めるきっかけになったのは、とある番組でのシェルパ斉藤さんの取材と書いたが、
実は同じ番組で「野田知佑さん」「本田亮さん(転覆隊)」の取材も行った。
当時はアウトドアの知識は全くなかったので
四万十川で「野田知佑さん」の撮影時は、オーラがあるおじさんとしか思わなかったし、
「本田亮さん」を取材した時も、無謀なおっさんとしか思わなかった。
カヌーなんて、とんでもない!絶対にありえない!と思っていた。
でも結局アウトドアに興味を持ち始めると、四万十川での野田さんの撮影が忘れられず、カヌーにも興味を持ち始めた。
それでも、キャンカーを手に入れた満足感で、そんな事はずーっと忘れていました。
ところが昨年、AKMLの仲間がカヌーを購入したのがきっかけで、またカヌーが欲しくなってしまったのだ。(周りに左右されやすい)
ママに相談するが「今、そんな余裕があるわけがないでしょ!」と軽くあしらわれて(怒られて)しまう。
けれど「頼むよ・・・頼むよ・・・」の、連日のしつこい攻撃にママも折れて「じゃあ、来年ならね・・・」とOKをもらった。
喜んだモアは早速舟探し、手軽でコストパフォーマンスの良い「インフレータブル」にも興味がそそられたが、やはり買うならファルト
何と言っても荷物が沢山積めるし、いつかは「四万十川」や「釧路川」を下ってみたいからだ。
そして今年の4月にめでたく「ウムナック380」購入後、その「釧路川」を下る機会がすぐに訪れたのだ。まだ初級者なのに・・・
モアのカヌー歴は、湖での経験が数回、川下りは地元の荒川だけ・・・「沈」経験もない。
必死で釧路川のリサーチ開始。
「全国リバーツーリング55Map」では屈斜路湖〜弟子屈までのルートは初級者コースとされている。
ネットで調べても「倒木にさえ気をつければ大丈夫」と書いてある。
けれど、野田さんの「日本の川を旅する」には、それなりに厳しいと書いてある・・・どうしよう・・・
モアがそんなに迷う理由の一つとして「川は子供達と一緒に下る」という前提があるからだ。
「そんなに不安ならば一人で下れ!」と言われそうだが、子供達にも釧路川の原生林を見せてあげたい。
結局、釧路川を前にしてみすみす帰ってきたら、ファルトを買った意味も無いじゃないか!と奮い立たせ決行を決意したのでした!

屈斜路湖〜釧路川 ツーリングマップ
砂湯キャンプ場〜眺湖橋       8km
眺湖橋〜弟子屈
(道の駅摩周温泉)  17km
合計 25km

ゴール

スタート

朝7時に起床。キャンプ場を軽く散歩をして、早速ウムナックの組み立てに入る。
組み立ては久々(といっても3ヶ月ぶり)だったので、30分強の時間がかかってしまった。
前回、荒川を下った時は誠士郎がパートナーだったので、今回は祐里奈がパートナー
祐里奈もこの日を楽しみにしていたらしい。
ママ、誠士郎、恭介は屈斜路湖で一日のんびり遊びの別行動。
朝食を8時半にを済ませ、昼食用にママにおにぎりを作ってもらった。
そして、飲み物やお菓子、地図を積んで、AM9時に砂湯キャンプ場を出発しました。

快調に屈斜路湖を漕ぐ、祐里奈も気合が入っているようでカヌーはグングン進む!
しかし、和琴半島の方から吹いてくる風が思っていたより強い。
困難ではないが、結構体力を消耗する。
今日の天気予報は、「雨がパラつく事もあるが基本的には晴れ」なのらしいが、いきなり雨が降って来た。
早いうちから濡れるのはたまらないので、ちょうど目の前にある「池の湯キャンプ場」に上陸して許可をもらい、雨宿りさせてもらった。
札幌から来たキャンプをしている人と話をしながら雨が止むのを待つ。
モアが、これから弟子屈まで下ると言うと、凄く驚かれてしまった。
えっ・・・そんなに珍しい事なの?そんなに驚かれると不安になるじゃん!やめてくれ!

30分程雨宿りしていると雨も止んだので再び出発。
最初の休憩地としていた「コタンの湯」まで頑張って漕ぐが、風の影響で思っていたより距離が稼げない。
天気は晴れてきたのだが、早く釧路川に入りたいという気持ちばかりが焦ってしまう。
そうして、「コタンの湯」に着いたのがAM11時30分。雨宿りしていた時間があったとはいえ、かなり時間がかかってしまった。

30分の休憩後、出発。
「コタンの湯」から釧路川の入り口「眺湖橋」はすぐに着いた。
頭を低くして「眺湖橋」をくぐるとそこは別世界の原生林!
周りの景色に見とれながら、しばらく川の流れに任せて進む。
祐里奈も「日本じゃないみたい!」と興奮している。
川幅は5m程で、ウソみたいに澄んでいる。魚が泳いでいるのも良く見える。
モア「来てよかっただろ!」
祐里奈「ウンッ!」
今思うとこの時にもっと写真をたくさん撮っておけばよかった・・・はしゃいでいられたのは最初だけ!
まともな川下りが初めてのモアは、一番最初のカーブが思っていたよりきつくて、茂みに突っ込んでしまったのだ。
「まぁ最初はこんなもんだろ」と笑ってみた・・・(冷や汗)

そのうち川は徐々に蛇行するようになり、危険な雰囲気を漂わせる「倒木」も現れてきた。
延々と繰り返さるカーブに少しずつに慣れて来て、行く手をさえぎる「倒木」の隙間を抜けていくように漕ぐ。
それでも写真を撮る余裕などない!
そして最初の瀬、通称「美留和の瀬」が見えてきた。前からはゴーッと言う音が聞こえてくる。
さぁ行くぞと覚悟を決めた瞬間、後ろからツアーの二人乗りカナディアンカヌーがやってきた。
ラッキー!コースを見せてもらえる。
ツアーのカヌーについて行くと、音だけでそれ程激しい瀬ではなかった。
絶叫マシン狂の祐里奈は「楽しい〜!」と喜んでいる。
そして、すぐに次の瀬がやってきた。
祐里奈「パパ沈しそう?」
モア「前のカヌーについて行けば大丈夫!」
するとそれを聞いていた前のカヌーに乗っているガイドさん
「この辺は沈しても溺れる事はないけど、ファルトがぶっ壊れますよ!」と、にこやかに笑いながら話しかけてきた。
それは困る!最初のリバーツーリングで買って半年のウムナックをオシャカにするのだけは避けたい。
2番目の瀬に突入!初めてカヌーが縦に歪む感覚があったが無事にクリアー。
「美留和の瀬」を過ぎるとすぐに、上陸地点と決めていた「美留和橋」が見えてきた。
しかし、上陸しようと思っていた場所は瀬の途中!
ツアーのカヌーは上手にUターンをして、漕ぎながらお客さんを降ろしていた。
モアにはそんなテクニックがないので、そのまま通過するしかありませんでした。

「美留和橋」を過ぎると、川の蛇行がなくなり急に一直線になった。
川の左右は護岸工事がされていて小さいテトラがある。
どうやらこの場所は人の手で川を直線にしたようだ。
普通のカヌーイストなら舌打ちでもするのだろうけど、モアには「やっと休憩ができる・・・」と安心したのが本音でした。

10分程のんびり出来たのだが、川はまた蛇行を始めた。川の流れも速くなり先程より川幅も狭くなってきた。
そして「札友内橋」を超えると本当の試練が待ち構えていた。
川は90度近い角度で連続してカーブが続き、しかも直前までどちらに曲がるのか見えないのだ!
そして見えない上にカーブの途中に「倒木」があり、進めるコース幅は1mにも満たない。
「倒木」の量も増え、90%近く川を塞いでいる倒木群がざらに出てきた。
水面から50cm程の倒木は強引に潜り抜けるしかない。
水中には「隠れ倒木」が沢山あり、引っ掛るとそのまま沈だ。心臓が激しく鼓動する。
祐里奈に漕がせるのをやめて、次に川がどちらに曲がるのか監視させる事にした。
祐里奈は「次は右!」「もう一回右」「左!」とカーブの方向を次々に教えてくれる。
この作戦が成功で、少し余裕が出てきた。しかし、もう一つ難関がある。それは「アブ」だ!
パドルを持つ為に両手が塞がっているので、首や手を何度も刺されてしまう。
この川を下る時にはカッコは良くないが「防虫ネット」をかぶらないといけないかもしれない。
そうして、果てしなく続くカーブが落ち着いてくると最後の難関が待っていた。
少し前から瀬が出てきたのだが、そこは瀬の途中で川が右に落ち込み、その場所を沢山の「倒木」が塞いでいる。
だが、それに気付いたのは瀬に入ってからだった。
右に落ち込みながら何とか倒木の隙間を行こうとするが、やはり倒木に突っ込んでしまった。
けれど運が良く瀬の勢いを利用し、何とかクリアーする事ができた。
もしかしたら、今の場所が「カヌーの墓場」と呼ばれている場所かもしれない・・・(後に、この場所が難所の「土壁」である事が判明)
そして、疲労困憊になったころ、ようやくゴールの「摩周大橋」が見えれてきた。
「摩周大橋」を潜った左手はカヌーの離発着所になっていて、道の駅「摩周温泉」の裏手だ。
上陸してカヌーを上げる。久しぶりの地面だ。
時間はPM3時45分。釧路川の入り口の「眺湖橋」を潜ってから4時間弱ぶっ続けで漕いで来た
ママに上陸の連絡をとり、カヌーをパッキングして、タクシーで砂湯キャンプ場に帰りました。

今回、釧路川「屈斜路湖〜弟子屈」間を漕ぎましたが、ハッキリ言います。
中級者以上には楽勝かもしれませんが、初級者にはツライです。
今思うとスリルがあって本当に楽しかったが、下っている最中は必死。
撮影した写真は全て余裕のある時で、本当の難所では撮影する余裕など微塵もありませんでした。
初級者で行こうと思っている方は覚悟してください。極上のスリルが待っています。
けれど、それらを圧倒的に凌駕する素晴らしい自然も待ってくれているのです!

@眺湖橋を潜ってしばらくは緩やかな流れが続き、原生林を楽しむ事ができる。
A
常に蛇行を繰り返していく、倒木に気を付けながら、しっかりと漕げば問題なし。
B
「美留和の瀬」 瀬は2つ続く。
   
最初の瀬は川の本流(真ん中)を進めば問題が無いが
    二つめの瀬は少し落ち込む、左手は護岸工事のテトラがあるので注意が必要。

C
「美留和橋」 日帰りカヌーツアーの終点になることが多い。
   
橋を潜った左手に上陸ポイントがあるが、瀬の途中なので初級者には厳しい。
   
だが、この場所で上陸しないと弟子屈まで漕ぎ続けるしかない
D
唯一休める事が出来る区間。簡単な食事を取る事もできる。
E
川幅も狭くなり倒木も増える難所区間。早めにコースを見極めるのがポイント。
F
このコース一番の難所「土壁」。いくつかの緩い瀬を越えた後にやってくる。川は右に落ち込み左は航行できない。
   
スカウティング出来ないので右に落ち込んだ瞬間にしっかり漕いでクリアー。そのまま瀬と倒木のきつい場所が数100m続く。
G
「摩周大橋」 橋を潜ると左手がカヌーの発着ポイントになっている。上陸した場所は道の駅摩周温泉の裏手。

※このマップはカヌー初級者であるモアの記憶によるポイントを記したものです。。
  このマップだけを頼りにするのではなく、必ず市販のリバーマップを参考にして下さい
  川は水量によって大きく変化します。十分に注意してリバーツーリングを楽しみましょう。

朝7時、今日も暑そう

朝の足湯

飲める温泉を飲んでみた

ウムナック組み立て完了

朝ごはん

まだ眠い・・・

モア・祐里奈はやる気マンマン 誠・恭は掘る気マンマン

いよいよ出発!少し波が立ってる

池の湯で雨宿り

晴れた!

やっとコタンの湯に到着

ちょうど清掃中でした

ここまでで、かなりの体力を消耗してしまった

あたしは元気だよ!

コタンの湯を出発

和琴半島

ツーリングツアーのスタート地点

眺湖橋だ!

釧路川に入った!

なぜか得意げ

ジャングルの中に入ったみたいだ!

「美留和橋」 上陸後の案内看板

隠れ倒木がたくさんでてきた

アブが・・・

倒木が行く手を遮る。でもこれは全然マシな方

方向の監視をする祐里奈

また流れが速くなってきた

摩周大橋到着!お疲れ祐里奈!

カヌーの中はグシャグシャに

釧路川に勝ったぞ!

タクシーで砂湯キャンプ場に戻る

ほっとした瞬間

モアの釧路川ガイドマップ

屈斜路湖・釧路川カヌー

2006/8/11

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